今回は“電気工事業の登録”について、ご説明いたします。
※大阪府を参考にご説明しますが、各自治体により違いがありますので、
必ず各自治体の手引きで確認するようにお願いします。
電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下「電気工事業法」という)
この法律は、電気工事業を営む者の登録等とその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もって一般・自家用電気工作物の保安が確保されることを目的としています。
1 用語の定義
・ 一般用電気工作物とは
電気工事士法第2条第1項(「一般用電気工作物」とは、電気事業法(昭和39年法律第170号)第38条第1項に規定する電気工作物(600 V以下で受電、又は一定の出力未満の小出力発電設備であってその構内において受電するための電線路以外の電線路に接続されていない等安全性の高い電気工作物)をいう。)に規定する電気工作物をいう。
概括的にいえば、一般家庭、商店等の屋内配線設備等がこれに該当する。
・ 事業用電気工作物とは
電気工事士法第2条第2項(「自家用電気工作物」とは、電気事業法第38条第3項に規定する自家用電気工作物(発電所、変電所、最大電力500KW以上の需要設備(電気を使用するために、その使用の場所と同一の構内(発電所又は変電所の構内を除く。)に設置する電気工作物(同法第2条第1項第十四号に規定する電気工作物をいう。)の総合体をいう。)その他通商産業省令で定めるものを除く。)をいう。)に規定する電気工作物をいう。
概括的にいえば、大規模マンション、ビル、オフィス、工場等の設備が該当する。
・ 電気工事とは
この法律において「電気工事」とは電気工事士法第2条第3項で規定する一般用電気工作物又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事をいいます。
ただし、次に定める軽微な工事を除きます。
① 電圧600V以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器ソケット、ローゼットその他の接続器又は電圧600V以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器にコード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
② 電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く。以下同じ。)又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に電線(コード、キャブタイヤケーブル及びケーブルを含む。以下同じ。)をねじ止めする工事
③ 電圧600V以下で使用する電力量計若しくは電流制限器又はヒューズを取り付け、又は取り外す工事
④ 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る。)の二次側の配線工事
⑤ 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置、又は変更する工事
⑥ 地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事
2 電気工事業法の適用範囲
電気工事業法は、一般用電気工作物及び最大電力500kW未満の自家用電気工作物を取り扱う電気工事業者に適用されます。
この法律において電気工事業とは、電気工事を業としているという狭い意味ではなく(つまり、有償・無償は問わない)反復・継続して他の者から依頼を受けた電気工事を実施する場合をいいます。
(電気工事士免状を有する者が、自宅の電気工事を行う場合等は、この法律の電気工事業には該当しません。)
具体的には、次に掲げる者はこの法律でいう電気工事業を営む者に該当しないので、後述の登録・通知・届出は必要としません。
(1) 請け負った電気工事の施工をすべて他の者に下請けさせて、自らその電気工事を行わない場合。
(2) 家庭用電気機械器具の販売事業者で、使用電圧が200V未満の家庭用電気機械器具
(ラジオ、テレビ、扇風機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電気コンロ、電子レンジ、電気アイロン、電気ストーブ、電気こたつ、電気スタンド、白熱電灯、放電灯〔安定器、変圧器別置のものを除く。〕その他これらに類するもの)
の販売に伴い、その器具の専用コンセントの取付等を販売した者自ら行う電気工事で次に掲げる電気工事以外の電気工事のみ行う者。
(注意:電気工事業法の規制は受けませんが、電気工事士法の規制を受けます。)
① 幹線(引込口から分岐過電流保護器に至る配線のうち、分岐回路の分岐点より電源側の部分をいう)の設置又は変更の工事
② 分岐回路(幹線から分岐して分岐過電流保護器を経て負荷に至る配線をいう。)の設置工事
③ 分岐回路に設置されている分岐過電流保護器の容量変更を伴う工事
④ 屋側、屋外配線に係る工事
(3) 住宅メーカーが、アフターサービスとして行う電気工事
3 登録・通知又は届出
電気工事業を営もうとする者は、都道府県知事又は経済産業大臣へ登録、通知又は届出しなければなりません。登録、通知又は届出の区分は、施工する電気工作物の種類と建設業許可の有無により区別されています。
・ 登録電気工事事業者
建設業法に基づく許可を受けずに、
電気工事業(自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営む者を除く)を営む場合は
登録が必要であり、この登録を行った者を登録電気工事業者といいます。
・ みなし登録電気工事事業者
建設業法に基づく許可を受け、
電気工事業(自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営む者を除く)を開始した者は、
登録電気工事業者とみなして電気工事業法が適用されます。
業務開始後、遅滞なく届出を行う必要があり、この届出を行った者をみなし登録電気工事業者といいます。
・ 通知電気工事事業者
建設業法に基づく許可を受けずに、
自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営もうとする場合は
通知が必要であり、この通知を行った者を通知電気工事業者といいます。
・ みなし通知電気工事事業者
建設業法に基づく許可を受け、
自家用電気工作物のみに係る電気工事業を開始した場合は、
通知電気工事業者とみなして電気工事業法が適用されます。
業務開始後、遅滞なく通知を行う必要があり、この通知を行った者をみなし通知電気工事業者といいます。
◎ 電気工事業者の登録申請先区分
電気工事業を営もうとする者は、次の区分により申請・届出をしなければなりません。
ア 同一の都道府県の区域のみに営業所を設置しようとする者
都道府県知事
イ 二以上の都道府県の区域内に営業所を設置しようとする者
・ 同一の産業保安監督部内の場合
産業保安監督部長
・二以上の産業保安監督部の区域にまたがる場合
経済産業大臣
なお、電気工事業開始届及び開始通知の場合も、同様の区分により届出、通知が必要です。
4 登録の有効期限
登録の有効期限は、5年間です。
引き続き電気工事業を営もうとする場合は、更新の手続きを行う必要があります。
(登録電気工事業者で有効期限を超過した者は、廃止とみなします。)
5 電気工事業者の義務
電気工事業を営む者には、次のような義務が課せられます。
(1) 主任電気工事士の設置とその職務
一般用電気工作物に係る電気工事を行う営業所ごとに設置し、作業を管理させるため
主任電気工事士を置かなければなりません。
主任電気工事士の職務は、危険及び障害が発生しないよう作業管理を誠実に行うことであり、
その作業に従事する者は、主任電気工事士の指示に従わなければなりません。
また、主任電気工事士が欠けた場合は2週間以内に後任を選任しなければなりません。
主任電気工事士の要件は、第一種電気工事士又は
第二種電気工事士の免状の交付日以後3年以上の実務経験を有する第二種電気工事士です。
なお、第二種電気工事士免状を所持し、認定電気工事従事者認定証を取得されている方は、
電気工事業の申請時に届け出ることで、600V以下の自家用電気工作物の作業も行うことができます。
2) 測定器具の備付け
電気工事業を営む者は、営業所ごとに次の器具を備えなければなりません。
・ 一般用電気工作物の 工事のみを行う営業所
① 回路計 (抵抗、交流電圧測定可能なもの)
② 絶縁抵抗計
③ 接地抵抗計
・ 一般用電気工作物・自家用電気工作物の工事を行う営業所
① 回路計 (抵抗、交流電圧測定可能なもの)
② 絶縁抵抗計
③ 接地抵抗計
④ 低圧検電器
⑤ 高圧検電器
⑥ 継電器試験装置
⑦ 絶縁耐力試験装置
(⑥及び⑦の試験装置の備付けは、必要な時に使用できるよう措置が講じられていることも含む。)
(3) 標識の掲示
営業所及び2日以上にわたり電気工事を行う施工場所ごとに、電気工事業者であるこ
との標識を掲げなければなりません。
(4) 帳簿の備付け
営業所ごとに次の事項を記載した帳簿を備え、5年間保存しなければなりません。
① 注文者の氏名又は名称及び住所
② 電気工事の種類及び施工場所
③ 施工年月日
④ 主任電気工事士等及び作業者の氏名
⑤ 配線図
⑥ 検査結果
(5) 電気用品の使用の制限
電気用品安全法に定める所定の表示が付されている電気用品でなければ電気工事に使用できません。
(6) 電気工事の従事制限
① 第一種電気工事士でない者を自家用電気工事の作業に従事させてはなりません。
② 第一種電気工事士又は第二種電気工事士でない者を一般用電気工事の作業に従事させてはなりません。
③ 特殊電気工事資格者でない者を特殊電気工事の作業に従事させてはなりません。
④ 認定電気工事従事者でない者を自家用電気工作物の簡易な電気工事に従事させてはなりません。
⑤ 電気工事を、電気工事業法にいう「電気工事業を営む電気工事業者」でない者に請け負わせてはなりません。
6 報告及び検査
経済産業省、同省中部近畿産業保安監督部近畿支部又は大阪府の職員が、
電気工事業者の営業所及び電気工事の施工場所等に立ち入り、
関係書類等の検査をし、関係事項について報告を求めることがあります。
7 登録の拒否
登録申請者が下記の要件に一つでも該当する場合、
または登録申請書及び添付書類に虚偽の記載もしくは記載が欠けているときはその登録を拒否します。
(1) 電気工事業法、電気工事士法、電気用品安全法に違反して罰金以上の刑に処せられ、
その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者。
(2) 電気工事業法による登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過していない者。
(3) 電気工事業法による登録を受けた法人でこの法律により登録を取り消された場合において、
その取り消し日前30日以内にその法人の役員であり、その処分のあった日から2年を経過していない者。
(4) 電気工事業法により業務の停止を命じられ、その停止の期間中に電気工事業を廃止し 停止の期間を経過していない者。
(5) 法人の場合は、その役員のすべてが、前(1)から(4)に該当していないこと。
8 罰 則
次の場合には、1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処せられ又は併科されます。
① 登録を受けないで電気工事業を営んだ。
② 不正の手段により登録を受けた。
③ 登録要件が欠けたとき、もしくは規定の届出をしなかった等による事業停止命令に違反した。
その他、この法律で定める諸規定に違反した場合は、それぞれ罰則の適用を受けます。
※ 営業所とは、
電気工事の施工の管理を行う店舗であり、本店、支店、営業所、出張所等の名称を問いません。
(電気工事の契約の締結、経営管理等のみを行い、具体的な電気工事の施工に関する管理をすべて下部組織等に行わせているような本店等は、営業所に該当しません。)
いかがだったでしょうか?
手続自体は簡単ですが、ご自身がどの登録や届出などを、どこへ提出するのか見極めなくてはいけません。
わからないことがあれば、ヴィーノ行政書士事務所までご連絡ください。